労働審判

1.労働審判が設けられた趣旨

労働関係・労使関係にかかわるすべての法的紛争は、他の紛争と同様に、終局的には裁判所において労働訴訟という形で解決されます。しかし、労働訴訟を裁判所に提起したとしても、解決には約1年を要します。たとえば、解雇された労働者が裁判所に解雇の無効を訴えようとしても、解雇され賃金も受け取れない状態では、解決に時間がかかればかかるほど、費用はかさみ、労働者は苦境に追い込まれることになります。そのような状況下では、訴訟の提起自体をあきらめてしまう労働者も多数いることが容易に想像できます。

労働訴訟を補完する手続として、平成18年に労働審判制度という新たな制度ができました。労働審判は、労働訴訟に比べると、格段に所要時間が少なくて済み、時間とコストがかかるため訴訟が提起できなかった労働者の受け皿となることが期待されています。労働審判の件数も年々増加しており、平成19年は1494件だったのに対し、平成25年には3586件となっております。

2.労働審判の手続と内容

労働審判とは、民事上の個別労働紛争について、審判官(裁判官)と、労働問題の専門的な知識と経験を有する労働審判員が関与しながら、紛争を解決するという新しい制度です。労働審判員とは、裁判所から2名選ばれます。1名は労働者側として、もう1名は会社側として選ばれ、労働者側は、労働組合で賃金・解雇の相談業務を行っている労働組合役員等が選ばれ、会社側は、企業の人事担当の方等が選ばれることが通常です。ただし、手続への実際の関与はあくまでも中立、公平な立場で関わります。

手続としては、3回以内の期日で労働審判が開かれ、話し合いの中で調停(和解)が試みられます。もし、調停がまとまらなければ、事案の実情に応じて解決案(審判)が出され、審判に異議がなければ、訴訟で得られる判決と同じ法的効果が生じるというものです。原則3回以内の期日で審理を終えることになっており、申立から終結までの平均日数は約70日といわれています。

また、職業裁判官だけではなく、労働問題に関する知識や経験が豊富な一般の人(労働審判員)が中立、公平な立場で審判手続に関与し、訴訟と比較して明確な証拠が揃っていなくとも、ある程度の証拠から心証を形成し、柔軟に紛争を解決されます。

一方で、仮に審判で労働者の希望に沿う審判がなされたとしても、審判に対して、2週間以内に異議があった場合には、審判は効力を失ってしまい、地方裁判所に訴えが提起されたものとみなされるため、長期化する可能性も否定はできません。もっとも、少なくとも全案件の約80%が、労働審判の手続内で解決を図ることができています。

なお、労働審判は、使用者の営業所又は労働者の就業先を管轄する地方裁判所が、管轄裁判所となることが通常ですが(労働審判法2条)、現在のところ、原則として、地方裁判所の本庁のみで行われており、地方裁判所の支部では、関東では東京地裁立川支部を除いて労働審判を扱っておりません。

3.労働審判の対象となる案件

上記のとおり、労働審判は原則3回の期日で紛争を解決しようとする手続であり、比較的簡明な事案が労働審判の対象となることが想定されています。複雑な案件である場合には、労働審判が終了し(労働審判法24条1項)、通常の訴訟に移行することになります(同24条2項)。対象となる事案自体は、労働関係のものであれば、賃金不払い、解雇、セクシュアルハラスメントなど広く対象となります。もっとも、労働組合と会社との紛争など、集団的な労働関係については労働審判の対象とはなりません。

また、当事者がもともと和解や審判に応じる意思がないような場合には、労働審判を申し立てても、訴訟に移行するだけですので、最初から訴訟を提起した方が良い場合が多く、在職中の労働問題などの場合には、労働者と使用者との間の利害関係や対立感情が峻烈な場合が多く、労働審判に向かないことが多いため、退職してから労働審判を申し立てるか、最初から訴訟を提起することになる場合が通常と考えられます。

4.労働審判を申し立てられた場合

労働審判では、早期の紛争解決の前提として、1回目の話し合いの前に、多くの資料の提出を裁判所から要請されます。申立てをされた会社側の場合、資料を準備するのが時間的に大変になる場合が多いのですが、そのような場合であっても、裁判所からは準備を急かされるのが通常ですので、会社側は対応に追われてしまうことになります。そして、第1回目の期日において、裁判所の方は心証を形成させてしまうのが実情ですので、仮に書類や資料を提出したとしても、それが遅くなってしまうと、審判官や審判員の方は、申立書類には何回も目を通している一方で、反論書類に目を通す時間がなくなってしまい、会社側にとって非常に不利な状態に陥りかねません。労働審判で不利な審判がなされると、その後の訴訟においても不利になる場合はありうると思われます。

このように、会社側は、労働審判を申し立てられると、非常に制約された時間の中で、資料を収集し、また、反論もしていかなければなりません。労働者側としては、十分に準備をした上で申し立てられることや、早期の紛争解決を目指せることから、近年労働審判は増えており、会社側も、労働審判に十分に対応できるように、弁護士を活用するなど日ごろから労働問題について法的整理をしておく必要があるでしょう。実際にも、労働審判が申し立てられた場合、申立人・相手方ともに8割以上の方が代理人弁護士を付けております。

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