勤務時間内に仕事が終わらない場合でも、緊急の必要がない限り、通常であれば残業する必要はないと考えられます。そのため、残業時間が労働時間に含まれるためには、企業の指揮命令が明示または黙示に行われていることが必要となります。
この点について、自宅に仕事を持ち帰る「持ち帰り残業」は、労働時間にあたらないと判断される可能性が高いと思われます。その理由としては、労働者の私的な生活の場である家庭で行われる業務には、指揮命令の効力が及ばないと考えられること、社内で残業する場合と異なり、企業側が労働者の残業の状況を把握することが困難であることなどが挙げられます。
この結果、持ち帰り残業で労働時間性が認められるケースは、企業側から自宅での業務を指示されて、これに従って業務を行った場合であり、私生活と残業をはっきり区別できた場合という例外的なものにとどまります。